「消費者という受け身の立場を離れて、物を売る側の視点に立てば、能動的な考え方を学べる」―。愛知県立三谷水産高校の前校長、丸﨑敏夫さん(60)はキャリア教育の在り方について、こう力説する。地元企業を巻き込んで実際の商品を開発させることで、多くの生徒が成長する様子を見届けただけに、言葉は自信に満ちている。
三谷水産高の商品づくりが注目されたのは、2011年に平松食品(豊橋市)と開発したつくだ煮「愛知丸ごはん」からだ。原料は実習船「愛知丸」の釣ったカツオ。たれと一緒にご飯に載せやすくするため、全体をジュレ状に仕立てた。
「実習船に乗る仲間たちが、揺れる船内で食べられるように」との思いが、ジュレ化につながった。その後の試作段階でも、生徒らは会社側に「味付けが辛い」などと率直な感想をぶつけた。
会社にとっては、伝統食品に若い感性を取り込む機会となった。商品はシリーズ化して現在6種類を販売している。売れ行きはいまだ右肩上がりだ。
同校はその後も地元企業と組み、同じくカツオを使った商品を開発。他にも深海魚メヒカリの加工品、未利用だった二枚貝の魚醤(ぎょしょう)などが次々と商品化された。
丸﨑さんは「メーカーとキャッチボールするうちに、製造過程を勉強できる。つくった商品の販売実習も行うので、高校で『6次産業化』を実践できた」と説明する。
生徒の変化で目を見張ったのは、コミュニケーション能力の向上だ。「企業から最も求められる
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