水窪文化会館(浜松市天竜区水窪町)の事務所に入ろうとドアに手を近付けると、「へす」という見慣れない言葉が書いてあった。
「へす」?
・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだろう?
「押す」でなく「へす」?
あいさつもそこそこに職員に尋ねると、水窪では押すことを「へす」というそうだ。
「へす」の下には「PUSH」の表示もあり、そちらは消えかけているが、「へす」は警戒されたのか、きれいなままだ。
PUSHの部分を押したのは「へす」が何のことか分からない、私のような地域外からの来訪者であろうことは容易に察しがつく。PUSHの字が薄いこと自体がそこはかとなく面白い。
それにしても「へす」とはなんだろう?
文化会館を訪ねた時は初めて見聞きする方言のように思ったが、帰って辞書を調べるとちゃんと載っていた。漢字で書くと「圧(へ)す」らしい。
それでようやく「へす」は「押し合い へし合い」の「へし」=「押すの相方」であることに気付いた。
やすしきよし、おぼんこぼんと違って「押し」と「へし」は同じ意味、「one and only」のoneとonlyのような関係であり、水窪では「押す」でなく「へす」を選んだわけだ。
…でも、なぜ「へす」なのか。お隣の佐久間町では普通に「押す」らしい。
「イチへしメニュー」や「へし活」といった応用はありなのだろうか?
三遠南信には、まだまだ知らないことがたくさんある。